一目均衡表は、一目山人(細田吾一)氏が考案したテクニカル指標です。
相場は買い方と売り方との均衡が破れた方向に動いていくという考えに基づいた分析方法です。
また、相場に変化が起こる時期を予測するという観点から、時間も重視しています。
時間論、波動論、値幅観測論などを総合的に判断するため、完全に理解して使いこなすのはなかなか難しいといわれている指標でもあります。
日本国内に限らず、国外でも「Ichimoku」という通称で広く知られており、メジャーなテクニカル指標の一つとなってきています。
はちわれ
- 一目均衡表が示すグラフや雲について
- 一目均衡表の時間論・波動論・値幅観測論について
- 一目均衡表で分かること
一目均衡表が示すグラフや雲について
一目均衡表は、以下の5本の線によって構成されています。
- 基準線
- 転換線
- 遅行スパン
- 先行スパン1
- 先行スパン2
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基準線
基準線は、指定期間における最高値と最安値の中心値を結んだ線です。
指定期間中は基準線の付近を価格が推移していたということを指します。
過去の基準線と比較することで、中期間における相場の大まかな流れを示します。
また、トレンド時には支持線や抵抗線の役割を担い、もみ合い時にはもみ合いの中心値を示す役割を担います。
はちわれ
そのため、基準線で反発する可能性が高いんだ。
その他にも、最高値と最安値の中心値を示す「転換線」「先行スパン」が同様に支持線/抵抗線の役割を担うよ。
基準線のPeriodは26が一般的です。
計算式
Kijun[0] = (Highest(0, y) + Lowest(0, y)) / 2
- Kijun[0]:当日の基準線
- Highest(0, y):当日から過去y期間における最高値
- Lowest(0, y):当日から過去y期間における最安値
転換線
転換線は基準線と計算式は同じで、指定期間における最高値と最安値の中心値を結んだ線です。
期間を基準線より短く設定することで、短期間における相場の大まかな流れを分析します。
転換線のPeriodは9が一般的です。
計算式
Tenkan[0] = (Highest(0, y) + Lowest(0, y)) / 2
- Tenkan[0]:当日の転換線
- Highest(0, y):当日から過去y期間における最高値
- Lowest(0, y):当日から過去y期間における最安値
遅行スパン
当日の終値を、当日を含めて指定期間過去にずらしたものが遅行スパンです。
当日の価格と指定期間前の価格を比較しやすくしています。
遅行スパンのPeriodは26が一般的です。
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一目均衡表においては期間設定をデフォルトのままで使うといいね。
計算式
Chikou[y] = Close[0]
- Chikou[y – 1]:期間(y-1)本前の遅行スパン
- 当日を含めてy期間過去に遅行スパンを表示するので、ローソク足の(y-1)本前になる。
- Close[0]:当日の終値
先行スパン1
先行スパン1は、基準線と転換線の中心を当日を含めて指定期間未来にずらして表示したものです。
短期の中心値と中期の中心値の中心を求めるので、短中期の中心値を示すと考えることができます。
一般的に、先行スパン2との隙間の空間を「雲」と呼びます。
先行スパン1をずらす指定期間は、26が一般的です。
また、先行スパン1と先行スパン2をずらす指定期間は同じ数値を設定します。
計算式
Senkou1[-(y-1)] = (Kijun[0] + Tenkan[0]) / 2
- Senkou1[-(y-1)]:当日から(y-1)本先の先行スパン1
- 当日を含めてy本未来に表示するので、(y-1)本先となる。
- Tenkan[0]:当日の転換線
- Kijun[0]:当日の基準線
先行スパン2
先行スパン2は、指定期間(1)における最高値と最安値の中心値を、指定期間(2)未来にずらして表示したものです。
基準線や転換線と計算自体は同じものですが、指定期間(1)は基準線や転換線よりも長い期間を指定します。
そのため、先行スパン2は長期間における相場の大まかな流れを示しています。
基準線や転換線と異なる点は、指定期間(2)だけ未来にずらして表示する点です。
指定期間(1)は52、指定期間(2)は26が一般的です。指定期間(2)は、先行スパン1の期間と同じ数値を設定します。
計算式
Senkou2[-(y-1)] = (Highest(0, z) + Lowest(0, z)) / 2
- Senkou2[-(y-1)]:当日から(y-1)本先の先行スパン2
- 当日を含めてy本未来に表示するので、(y-1)本先となる。
- Highest(0, z):当日から過去z期間における最高値
- Lowest(0, z):当日から過去z期間における最安値
一目均衡表の時間論・波動論・値幅観測論
一目均衡表は、以下の3つの理論に基づいて構成されています。
- 時間論
- 波動論
- 値幅観測論
時間論
一目均衡表は、時間を重要視しています。
相場の転換点や相場が加速、継続(延長)するポイントを時間の経過によって予測します。
上記のような相場の変化を総称して「変換日」と呼びます。
時間論は以下の2種類があります。
- 基本数値
- 対等数値
基本数値
基本数値は、時間論の基本となるものです。
9,17,26の3つが基本数値を構成する数値で「単純基本数値」と呼びます。
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基本数値は、以下の表のとおりです。
基本数値 | 単位 |
9 | 一節 |
17 | 二節 |
26 | 三節(一期) |
33 | 一期一節 |
42 | 一期二節 |
52 | 二期 |
65 | |
76 | 三期(一巡) |
129 | |
172 |
これらの基本数値は、上昇相場や下降相場での動きを示しています。
相場の天底を基準日として、足の本数を数えていきます。
上昇相場では、最初の第一波動を一節(9期間)、中間の押し目や最終波動、大底からの一波動を二節(17期間)とし、これを基本としています。
上昇相場における波動は長くても129期間か172期間で転換すると考えられています。
下降相場では、最初の第一波動は33期間としています。一節(9期間)と二節(17期間)は本格的な下落が始まる前の一時的な下げ止まりや戻り値であることが多いと考えられています。
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対等数値
対等数値とは、過去の変化日と変化日の間の期間を数え、その後の変化日に当てはめる考え方です。
「安値から高値まで、もしくは高値から安値までにかかった期間が今後の相場に影響する」という考え方です。
変化日から変化日までの期間は、基本数値とは異なります。
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波動論
波動論では、高値と安値を結ぶことで相場の細かい上下動を省略し、直線的な相場の動きを用いて分析します。
一目均衡表では、以下のような波動を定義しています。
説明 | |
I波動 | 安値から高値へ上がる(高値から安値へ下がる)一直線の相場 |
V波動 | 上げ⇒下げ(下げ⇒上げ) Vの字または逆Vの字を描く相場 |
N波動 | 上げ⇒下げ⇒上げ(下げ⇒上げ⇒下げ) Nの字または逆Nの字を描く相場 |
P波動 | 徐々に高値が切り下がり、安値が切り上がる相場(相場の値幅が収縮している相場) いずれどちらかにブレイクする。 |
Y波動 | 徐々に高値が切り上がり、安値が切り下がる相場(相場の値幅が拡大している相場) いずれどちらかにブレイクする。 |
S波動 | 下げた(上げた)相場が上昇(下落)し、一度押し目を形成するも以前の高値(安値)で反発し、さらに上昇(下落)する相場 |
基本的にはI波動が繰り返されて、V波動やN波動を形成するという考え方です。
一目均衡表では、相場が一度上昇(下落)を始めたら、N波動を完成するまでは下落(上昇)に転じることはないとされています。
値幅観測論
値幅観測論は水準論ともいわれています。
N波動の最後を形成するI波動がどこまで上昇(下落)するのかを計算するときに用いられる考え方です。
一目均衡表では、主に4種類あります。
計算式 | |
V計算値 | (B+B-C) |
N計算値 | C+(B-A) |
E計算値 | B+(B-A) |
NT計算値 | C+(C-A) |
一目均衡表で分かること
一目均衡表で分かることは、以下のようなものがあります。
- 買い勢力と売り勢力の均衡
- 抵抗線や支持線
- 相場の方向性や状態
これらのことは、各ラインごとに分析することができます。
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買い勢力と売り勢力の均衡
買い勢力と売り勢力の均衡は、以下の5線で分析することができます。
- 転換線(短期水準との比較)
- 基準線(中期水準との比較)
- 先行スパン1(短中期水準との比較)
- 先行スパン2(長期水準との比較)
- 遅行スパン(過去との比較)
転換線とローソク足の位置関係
転換線は、短期における価格変動の中心値を結んだ線です。
そのため、買いと売り勢力の拮抗するラインと考えることができます。
- 転換線の上にローソク足がある
- 短期的に買いの勢いが強い
- 転換線の下にローソク足がある
- 短期的に売りの勢いが強い
基準線とローソク足の位置関係
基準線は、中期における価格変動の中心値を結んだ線です。
そのため、買い勢力と売り勢力の拮抗するラインと考えることができます。
- 基準線の上にローソク足がある
- 中期的に買いの勢いが強い
- 基準線の下にローソク足がある
- 中期的に売りの勢いが強い
先行スパン1とローソク足の位置関係
先行スパン1は、転換線と基準線を足して2で割った数値を26日未来にずらして表示した線です。
そのため、ローソク足と比較する際は「26日前の短中期的な買いと売り勢力の拮抗点」としてとらえることができます。
- 先行スパン1の上にローソク足がある
- 短中期的に買いの勢いが強い
- 先行スパン1の下にローソク足がある
- 短中期的に売りの勢いが強い
先行スパン2とローソク足の位置関係
先行スパン2は、長期における価格変動の中心値を結んで26日未来にずらした線です。
そのため、ローソク足と比較する際は「26日前の長期的な買いと売り勢力の拮抗点」としてとらえることができます。
- 先行スパン2の上にローソク足がある
- 長期的に買いの勢いが強い
- 先行スパン2の下にローソク足がある
- 長期的に売りの勢いが強い
遅行スパンとローソク足の位置関係
遅行スパンは、現在の価格を26日過去に表示させたものです。
遅行スパンと同じ時間軸にあるローソク足とを比較することで、「26日前のトレーダーが現在勝っているのかどうか」を分析することができます。
- 遅行スパンより上にローソク足がある
- 26日前にロングでエントリーしたトレーダーは勝っている(買いの勢いが強い)
- 遅行スパンより下にローソク足がある
- 26日前にショートでエントリーしたトレーダーは勝っている(売りの勢いが強い)
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抵抗線や支持線
転換線や基準線、先行スパン1、先行スパン2は、価格変動の中心値を示しています。
価格変動の中心値であるということは、勢力の拮抗点でもあります。
つまり、勢力が攻防するラインでもある(=抵抗線や支持線)と考えることができます。
そのため、トレンド相場の際には各線が抵抗線や支持線の役割を担うことがしばしばあります。
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相場の方向性や状態
相場の方向性や状態を示すのは、転換線や基準線、先行スパン1、先行スパン2です。
これらは当日の価格で最高値か最安値が更新されるか、ローソク足が更新された際に最高値の切り下げや最安値の切り上げが発生しない限り値が変わることはありません。
そのため、以下のように分析することができます。
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- 過去数本において線の数値に更新がない
- もみ合い相場である
- 線が上昇している
- 最高値を更新、またはローソク足更新時に過去の最安値が切り上がった
- 線が下降している
- 最安値を更新、またはローソク足更新時に過去の最高値が切り下がった
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一目均衡表の特徴と使い方
一目均衡表は、各線を総合的に分析することで真価を発揮するテクニカル指標です。
知れば知るほど奥深く、使いこなすことができればかなりの情報を分析できると言えます。
ご自身のトレードスタイルに合わせて、活用してみてはいかがでしょうか。