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ソフトバンクグループ問題の本質を解説

ソフトバンクG問題の本質

 

2020年3月29日付け日経新聞朝刊は、ソフトバンクG(以下SBG)を取り上げ「投資逆風、コロナ禍で財務悪化も」と伝えています。

昨年の秋、米シェアオフィス大手「WeWork」の経営不振が、SBGのファンド事業を赤字にしましたが、さらにコロナショックが打撃を与えているというのです。

今回は、連日のように伝えられるSBG問題の本質が、どこにあるのかを整理しました。

SBGの営業損益赤字

2020年2月12日SBGは、2020年3月期第3四半期(4月~12月)決算を発表しました。

売上高は7兆898億円で前年同期から1.1%の減少ですが、営業損益は129億円の赤字で前年同期の利益1兆8590億円から大きく下がっています。

SBGが発表した、セグメント別の営業損益は次のとおりです。(単位:億円)

事業内容 営業損益
ファンド事業 ファンド運営 △7,978
ソフトバンク事業 国内通信サービス 8,049
スプリント事業 米国通信サービス 1,378
アーム事業 マイクロプロセッサー関連 △427
ブライトスター事業 海外携帯端末 △21
その他 △660
調整額 △471
連結合計 △129

(注)営業損益の△は赤字。

これを見ると、ソフトバンク事業とスプリント事業が稼いだ利益をファンド事業の損失が食いつぶしていることが分ります。

ファンド事業の赤字7,978億円のうち、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF1)が保有する投資の評価損失が7,273億円です。WeWorkなど投資先の価値減少が影響しています。

留意すべきは、SBGは国際会計基準(IFRS)を採用しているため、評価損益を営業損益として計上することです。

投資先企業の株価の変動によって、SBGの営業損益は常に不安定な状態に置かれています。

WeWorkの評価額下落と企業本質への疑問

WeWorkは長期リースで不動産スペースを借り上げて、付加価値を付けてコワーキングスペースとして高い賃料で貸し出すビジネスモデルです。

2017年からSBGはWeWorkへの投資を始め、2019年12月末現在の投資額は累計103億米ドルです。

SBGはWeWorkの企業価値を470億米ドルと値踏みし、新規株式公開(IPO)を目論見ました。

しかし、赤字が続いたこと、アダム・ニューマンCEOによるガバナンスに疑義が生じたことなどから、IPO評価額が急落し、2019年9月IPOは断念されました。

この問題の本質は、WeWorkは単なる不動産サブリース会社ではなく、ビッグデーターを収集しAIで解析しスペースに付加価値を付けられる「テクノロジー企業」なのかという点にあります。

SBGが発表したWeWork5カ年成長計画は、2022年フリーキャッシュフローの黒字化を掲げています。

孫正義社長は「WeWorkのテクノロジー企業としての側面は、利益体質に改善されてから(つまり2022年以降)の応用段階になってから」と説明しています。

それまでは「テクノロジー企業」として期待できないということです。

ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF1)投資先企業への不安

2017年、SBGはソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF1)の運用を開始しました。

ユニコーン(評価額10億米ドル以上の非上場企業)の中のAI関連ベンチャー企業に集中投資するものです。

サウジアラビア政府系投資ファンド(PIF)などから資金を集めています。

毎年10社程度の上場を目論んでいたようで、WeWorkはその一つになるはずでした。

SVF1は2019年12月末時点で、88社に投資し、うち上場8社、非上場80社です。

累計投資額は、上場企業96億米ドル、非上場企業709億米ドル、合計805億米ドル(約9兆円)です。

非上場企業は企業数で91%、累計投資額で88%になります。

重要な点は、非上場企業の個別経営状況が開示されていないところにあります。

WeWork問題が顕在化すると、業績の実態が白日にさらされ、事業の本質に疑念が持たれました。

WeWorkと他の投資先に事業上の関連はありませんが、非上場企業の個別情報が不透明なため、「他の投資先は大丈夫だろうか」と疑いの目で見られるようになりました。

さらに、コーポレートガバナンスやコンプライアンスに範囲を広げて、より厳しくみられるようになっています。

ワンウェブの財務問題にはSBGは立ち位置を守った

3月27日衛星通信事業を手がける英ワンウェブは、会社更生法の適用を申請しました。

コロナショックで金融市場が混乱し資金調達できなかったためといわれています。

SBGは同社に19億米ドル投資し、持ち分法適用会社にしています。

注目すべきは、SBGがワンウェブの支援に乗り出さなかったことです。

WeWork問題では、SBGはマジョリテイ出資していたわけではなく、救済義務はありませんでした。

しかし、経営実態としてSBGのコントロール下にあったため、追加資金コミットメントを含む支援に乗り出しました。

他の投資先に対しても、経営危機が顕在化すると、SBGが支援に乗り出すのではとリスク視されていました。

孫正義社長は第3四半期決算説明会で、「投資先の財務は独立採算」「救済投資は行わない」とくり返しています。

ワンウェブ問題でその立ち位置は守られたといえます。

資産売却、格付け取り下げ、非上場化検討

3月23日SBGは4.5兆円の資産を売却し、自己株式取得と負債削減を行うと発表しました。

保有する株式価値が27兆円であるに対し、SBGの株式時価総額は6兆円に過ぎません。

市場低評価の改善と信用格付けの向上を目的に資産売却するものです。

3月25日、これに対しムーデイーズジャパンは、SBGの格付けを2ランク引き下げました。

ムーデイーズジャパンは、「現在の金融市場低迷と資産価値の下落、質への逃避が見られる中、資産売却を実行することは容易ではない」との見解です。

同日SBGは、ムーデイーズジャパンの見解を不適切なものとして、格付け申請を取り下げました。

SBGの非上場化の検討は、3月24日英紙フィナンシャル・タイムズが伝えたものです。

SBG株価が大幅安になる中、孫正義社長は借り入れで資金量を増やし、非上場化が可能と見たようです。

この計画は、資産売却の発表直前に検討されたようですが、すぐ断念されたとのことです。

資産売却、自社株買いを発表してからは、一度3,000円を割った株価が3,500円以上まで回復しています。

ソフトバンクグループ問題のまとめ

ソフトバンクグループは創業以来の大ピンチかもしれません。

アリババ株という多額の資産があるので、すぐには倒産しないという意見もありますが、今後も株価下落が止まらないようでしたら、かなり苦しい立場に立たされるでしょう。

孫社長には日本を代表する経営者なので、何とかがんばってほしいですね!

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